遺産相続でもっとも大きな金額になることが多い不動産ですが、その名前の通り分けにくい・分けられないという性質から、相続の金銭トラブルの原因になりやすいというデメリットがあります。
遺産相続をめぐる不動産トラブルを避けるためには、どんな点に注意するとよいのでしょうか。そのポイントを見てみましょう。
意外と身近な不動産売却のトラブル
「相続トラブル」と聞くと、資産家で発生する問題だと考えがちですが、実は遺産分割事件の約7割が、遺産総額5,000万円以下であり、1,000万円以下に絞ってもの約3割を占めています。相続トラブルとは無縁と考えている人ほど、トラブルに巻き込まれやすいのです。
遺産相続では遺言書がなくても法定相続分で分割すればいいと考えがちですが、相続財産は現金のようにきれいに分割できる物ばかりではなく、不動産のように分割できないものを相続するとトラブルの原因となります。
きれいに分割できないことがトラブルの原因になる
自宅や田畑などの不動産があると、その資産価値をどう評価するのかによって、相続額にも大きく影響します。売却して現金化できれば解決しますが、売りたいときに売りたい金額で売れるとは限りません。売れたタイミングや金額によってはトラブルに発展することがあります。
また、不動産を所有している親が要介護者となって長い間介護をしてきたのに、いざ相続の場面で一切無関係で過ごしてきた兄弟姉妹と相続金額が同額では、簡単に納得がいくものではありません。その事実を捉えただけでも、相続トラブルは極めて身近な問題だといえるのです。
トラブル回避のためにも最初に相続人を確認する
相続が発生したとき、まずは相続人が誰になるのか確認をする必要があります。一代で済むなら比較的簡単ですが、数代の相続が関係する数次相続では、それぞれの相続人を特定して連絡をとることすらも簡単ではありません。
状況によっては専門家の介入が必要になる
数次相続では全く面識のない相続人やそもそも連絡先が分からない相続人も珍しくないので、状況次第では弁護士や司法書士などの専門家に相続人の調査を依頼する必要があります。このように、相続そのものが手間がかかることは珍しくないのです。
不動産の評価方法もトラブルの原因になる
現金のように分割するのが難しい不動産の遺産分割がトラブルに発展しやすいもう1つの理由は、不動産の評価方法です。不動産の評価方法はいくつかありますが、評価方法によってその評価額は大きく異なることは珍しくありません。
相続人全員が売却・現金化を望むなら、評価方法もトラブルの原因になるリスクがあります。
評価額をめぐるトラブルは極力避ける
一般的な評価方法に、不動産業者や不動産鑑定士に売却を想定して査定する時価(実勢価格)がありますが、不動産業者によって数十万から数百万の差が生じることも珍しくありません。
現物分割が難しいときによく使われる代償分割などは、代償金を支払うことになる相続人は出来る限り低い評価、代償金を受け取る相続人は高い評価を狙うので、評価方法もトラブルの原因になりやすくなります。評価方法をめぐるトラブルも極力避けたいポイントであり、評価方法のすり合わせはできるだけ早めにしておくことトラブルを避けるためにも欠かせません。
トラブル回避よりもダメージを抑えることを考える
まとまった金額のやり取りになる不動産売却では、身内であってもトラブルの種になりやすい傾向があります。
不動産売却ではトラブル回避に力を注ぐよりも、トラブルから受けるダメージを抑えることを念頭に置くほうが効果的かもしれません。